SEHS-Sは中学生・高校生の強みを測定する36項目からなるアンケートです。このアンケートでは、12の子どもの強みを測定します。12の強みの要素は、4領域に分かれており、さらにそのすべてを合計した1つの強みの複合体としてとらえることが可能です。この3層構造からなるモデルは、理論的に導き出されたモデルですが、実際のデータでも統計的手法で支持されています。
これまで、自己効力感やソーシャルサポート、共感性などは単体で研究されることが多かったのですが、これらの強みは複数あることで相乗効果をもたらすと言われており、子どもの強みを包括的にとらえることの重要性が指摘されています(Renshaw et al., 2014)。
SEHS(Social Emotional Health Survey:社会面・感情面の健康調査)は、学校の児童生徒全員のメンタルヘルススクリーニングのために用いられるアンケートとして、米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校のマイケル・J・ファーロング博士によって開発されました。
そして、子どもの学校生活の満足度や学校への親和性、学業成績と関連することが示されています。現在では、このアンケートは、イギリス、スペイン、オーストラリア、中国、韓国など広く、子どものメンタルヘルスのスクリーニングや研究目的で使用されています。
SEHSには、小学生版、中学生・高校生版、大学生版がありますが、ここでは小学生版、中学生・高校生版について簡単に説明します。
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SEHS-Primary(SEHS-P)
小学生対象
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SEHS-Secondary(SEHS-S)
中・高校生対象
SEHS-Pは小学生の強みを測定する21項目からなるアンケートです。子どもが自分自身や日々の生活について肯定的にとらえられているかどうかについて、感謝、楽観性、熱意、根気強さの4要素を測定します。
強みの要素 | 項目例 | 項目数 |
---|---|---|
感謝 | 学校に行くことを嬉しい(ありがたい)と感じる | 5項目 |
楽観性 | 学校で良いことが起きるだろうと前向きに考える | 5項目 |
熱意 | 学校で新しいことを学ぶとき、わくわくする | 6項目 |
根気強さ | 学校の課題が正解になるまで、やり続ける | 5項目 |
参考文献:Furlong, M. J., You, S., Renshaw, T. L., O’Malley, M. D., & Rebelez, J. (2013). Preliminary development of the Positive Experiences at School Scale for elementary school children. Child Indicators Research, 6, 753–775. doi:10.1007/s12187-013-9193-7 Iida, J., Ito, A., Aoyama, I., Sugimoto, K., Endo, H., & Furlong, M. J. (2021). Validating a social emotional wellness survey for Japanese elementary school students. Educational and Developmental Psychologist, Published online March 29, 2021.
強みの要素 | 項目例(各3項目) | ||
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強みの複合体 |
自己信頼 |
自己意識 | したいことやなぜそれがしたいかが分かっている |
自己効力感 | 得意なことはたくさんある | ||
根気強さ | わからないことがあると、わかるまで何度も先生に聞く | ||
他者信頼 |
学校サポート | 学校には、私が話したいことがあるときに聞いてくれる先生や他の大人がいる | |
家族サポート | あなたの家族はお互いに助け合っている | ||
ピアサポート | 自分のことを心配してくれる同年代の友人がいる | ||
感情コンピテンス |
感情制御 | 自分の行動には責任をとる | |
共感性 | 他の人がどう感じたり考えたりしているかを理解しようとする | ||
行動制御 | 行動する前に考える | ||
生活の充実 |
感謝 | 昨日から今日までの間に、感謝することがあった | |
熱意 | 今エネルギーに満ちている | ||
楽観性 | 毎日面白いことが起きると期待している |
参考文献:
Furlong, M. J., You, S., Renshaw, T. L., Smith, D. C., & O’Malley, M. D. (2014). Preliminary development and validation of the social and emotional health survey for secondary school students, Social Indicators Research, 117, 1011–1032.
Ito, A., Smith, D. C., You, J., Shimoda, Y., & Furlong, M. J. (2015). Validation and utility of the Social Emotional Health Survey-Secondary for Japanese Students, Contemporary School Psychology, 52, 349– 362.
飯田順子・伊藤亜矢子・青山郁子・杉本希映・遠藤寛子・Furlong J. Michael 2018 日本語版ソーシャル・エモーショナル・ヘルス・サーベイの作成 心理学研究,90,32-41.
SEHSの原版の情報や国際研究の動向については、以下のホームページをご参照ください。
Project Covitality University of California Santa Barbara: https://www.covitalityucsb.info/