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研究成果

最初に研究を始めた高校生調査から、見えてきたいくつかの主要な結果についてご紹介します。特に、自分の強みを認識している生徒は、落ち込むことがあっても、人生に意味がないというレベルまで落ちこむことは少ないということがわかりました。詳細は以下になります。

子どもの強みの領域数と
強みの特徴

高校生を対象とするSEHS-Sには、自己信頼・他者信頼・感情コンピテンス・生活の充実という4領域(※1)があります。
先行研究(Furlong, et al.,2014)を参照し、各領域に含まれる項目の平均が4.3以上を強みと判定した結果、4領域すべてが強みと判定された生徒の割合が14.2%、3領域15.9%、2領域22.6%、1領域22.6%、0領域20.7%でした(図1)。強みが0領域とされる生徒が20%を超えており、心配されます。

図1 強みの領域数別の生徒の割合
図1 強みの領域数別の生徒の割合

また、各要素が強みとされた子どもの割合は、図2のようになりました。
強みと判定された割合が高かったのは、感情制御70.2%、共感性67.4%、ピアサポート64.4%でした。
強みと判定された割合が低かったのは、根気強さ21.3%、熱意24.2%、楽観性30.6%でした。
日本の子どもたちは集団生活を送る中で、自分の気持ちをセーブする力や他者の気持ちを理解する力、友人と助けあう力があると自分で評価している子どもが多いことが示されました。
一方で、わからない問題に取り組む力や日々の活力を感じる力、未来に対して期待する力を測定する項目に対して、得点が低い傾向が見られました。

図2 各下位領域における強みと判定された生徒の割合
図2 各下位領域における
強みと判定された生徒の割合

次に、こうした強みが学校生活やストレスに及ぼす影響を見ていきます。

強みの領域の数と学校に
親しみを
感じている程度(学校への親和性)の関連

強みの領域数と学校に対する親しみを尋ねる項目の関連を検討した結果、図3、図4のような結果が示されました。強みが多い生徒は、「この学校で楽しい」「この学校で危険を感じることはない」という項目に、「当てはまる」と回答している生徒が多いという結果でした。つまり、強みが多い生徒は、学校に対する楽しさや安心感・安全感が高いことが示唆されました。

図3「この学校で楽しい」と回答した生徒の割合
図3「この学校で楽しい」と回答した
生徒の割合
図4「この学校で危険を感じることはない」生徒の割合
図4「この学校で危険を感じることはない」生徒の割合

強みの領域の数と
心理的ディストレスの関連

強みの領域の数と心理的ディストレスの関連では、メンタルヘルスの二次元モデル(子どものメンタルヘルスの不調(ディストレス)のレベルと、子どもの強みの認識のレベルを掛け合わせて、子どものメンタルヘルスをとらえる枠組み、詳細は「About SHES SHESとは」参照)を支持する結果が得られました。

「この1か月間に、落ち込んだことがあった」という項目に「とてもよくあてはまる・あてはまる」「ややあてはまる」「少しあてはまる・あてはまらない」と回答した生徒の割合は、強みの領域数とほとんど関連が見られませんでした(関連の強さを表す相関分析という分析でも、関連の値はとても低いものでした)。(図5)

図5「この1ヶ月間に、落ち込んだことがあった」生徒の割合
図5「この1ヶ月間に、落ち込んだ
ことがあった」
生徒の割合

一方、「この1か月間に、自分の人生に意味がないように感じた」という項目に、「とてもよくあてはまる・あてはまる」「ややあてはまる」「少しあてはまる・あてはまらない」と回答した生徒の割合には、強みの領域数との関連が見られました。強みの領域数が0の生徒では、「とてもよくあてはまる・あてはまる」と回答した生徒が34.1%、強みの領域数が4の生徒では、同様の回答をした生徒が7.9%でした。この結果は、自分の強みを認識している生徒は、落ち込むことがあっても、人生に意味がないというレベルまで落ちこむことは少ないということが示唆されています。(図6)

図6「この1ヶ月間に、自分の人生に意味がないように感じた」生徒の割合
図6「この1ヶ月間に、自分の人生に意味が
ないように感じた」生徒の割合

この結果は、ディストレスというネガティブな側面のみでなく、強みというポジティブな側面も子どものスクリーニングの際にとらえる必要性を示していると言えます。